防音カーテンって、本当に販売会社が謳っているような遮音効果があるのか知りたくありませんか?
編集部では、防音製品専門店が販売している防音カーテンを用いて、第三者機関に依頼して遮音性能測定試験を実施しました。
試験の結果、自動車や鉄道の交通騒音など、窓の外から室内へ入ってくるゴーと言うような低音域の騒音に対してはほとんど効果が無いことが判明しました。
その一方で、ペットの泣き声や楽器演奏音など、室内から屋外へ漏れる中高音域に対しては、騒音を半減させる程の遮音効果が見込めることも分かりました。
つまり防音カーテンは、あなたが屋内から屋外への音漏れを防ぎたいなら積極的に買うべきであり、屋外から屋内へ入ってくる騒音を防ぎたいなら買うべきではありません。
ここでは、防音カーテンでは防ぐことの出来ない交通騒音等を低減する具体的な窓の防音方法についてもお伝えします。
しっかりとした遮音効果のある窓の防音対策をして、騒音に怯えることなく安心した生活をお過ごし下さい。
1.防音カーテンによる窓の遮音性能試験の結果
1-1.遮音性能試験の試験方法と測定結果
1-1-1.遮音性能試験の方法
防音カーテンは、防音製品専門店のピアリビングが発売している「コーズ」という製品を使用して試験を行いました。
遮音測定試験は、第三者機関である東京テクニカルサービス株式会社によって行われ、新築のマンションのバルコニーに面する掃出し窓において、防音カーテンの設置前と設置後の両方の遮音性能を測定することで、防音カーテン単体の実際の遮音性能を算出しました。
写真:防音カーテンが設置された窓 編集部撮影
測定は、JIS A 1417-1「建築物の空気音遮断性能の測定方法」及び建築物の遮断性能基準と設計指針(日本建築学会編)の「建築物の現場における音圧レベル差の測定方法」に基づき行われました。
メーカーや販売会社がホームページやカタログ等で謳っている防音カーテンの性能は、試験室における製品単体の遮音性能であり、設置環境によって実際の防音性能はかなり異なってきますので、カタログ値を鵜呑みにしない様にしましょう。
1-1-2.遮音性能試験の測定結果
①防音カーテン無しの場合の窓の遮音性能
まず、新築マンションに設置されているT-4等級の二重サッシ(窓)の遮音性能を、防音カーテンの設置をしないで測定しました。
表:防音カーテン無しの窓の遮音性能
図:防音カーテン無しの窓の遮音等級
防音カーテン無しの場合は、低音域の125Hzで25.3デシベル、250Hzで40.1デシベル、中音域の500Hzで48.6デシベル、1000Hzで54.1デシベル、高音域の2000Hzで44.2デシベル、4000Hzで51.5デシベルの遮音性能となりました。
防音カーテンの無い状態での窓の日本建築学会における遮音等級は、D-35となりました。
②防音カーテン有りの場合の窓の遮音性能試験結果
次に、カーテンの周りに隙間が出来ないように、窓を完全に覆うように防音カーテンを設置して、遮音性能を測定しました。
表:防音カーテン有りの窓の遮音性能
図:防音カーテン有りの窓の遮音等級
防音カーテン有りの場合は、低音域の125Hzで26.7デシベル、250Hzで41.2デシベル、中音域の500Hzで49.9デシベル、1000Hzで50.2デシベル、高音域の2000Hzで51.1デシベル、4000Hzで59.1デシベルの遮音性能となりました。
日本建築学会における遮音等級はD-40となり、防音カーテンを設置した事で、遮音等級がD-35からD-40へ上昇しました。
二つの遮音等級グラフを比較すると、高音域の遮音性能が防音カーテンによって見事に補完され、防音カーテン設置後の方が、全ての周波数にわたって窓の遮音性能が安定していることが分かります。
③防音カーテン単体の遮音性能測定結果
防音カーテン設置前と設置後の遮音性能試験の性能差が、防音カーテン単体の実際の遮音性能になります。
防音カーテン単体の遮音性能は、125Hz~4000Hzの周波数において、1.1デシベルから7.6デシベルという遮音性能測定の結果になりました。
中心周波数 | 125Hz | 250Hz | 500Hz | 1000Hz | 2000Hz | 4000Hz |
音圧レベル差 | 1.4dB | 1.1dB | 1.3dB | 5.1dB | 6.9dB | 7.6dB |
表:防音カーテン単体の遮音性能測定結果 編集部作成
1-2.外部からの騒音にはほとんど効果が無い
もしあなたが道路からの交通騒音をなんとか静かにしたいと考えている場合は、防音カーテンを購入すべきではありません。
遮音性能試験の結果から、125Hzから500Hzまでの低音域では1.1デシベル~1.3デシベルと、この防音カーテンの遮音性能はほとんど無いことが分かりました。
表:自動車走行音の平均音圧レベル
引用:日本音響学会誌50巻3号『自動車走行騒音のパワーレベルとスペクトル』曽根敏夫
自動車走行音による騒音は、ある特定の周波数の音が特別大きいのではなく、63Hz~4000Hzの重低音から高音の全域に亘って70~80デシベルの騒音が発生することが上の図から分かります。
従って、主に中音域から高音域に対してのみ遮音性がある防音カーテンでは、ほとんど交通騒音を遮断する事は出来ないのです。
1-3.室内から屋外への音漏れには効果がある
もしあなたが、ペットの泣き声やピアノ等の楽器演奏音を屋外へ漏らしたくないと考えている場合は、防音カーテンは有効です。
小型犬から中型犬の泣き声はおおむね500Hz~1400Hzの中音域から高音域の周波数帯になりますので、防音カーテンで音漏れを減衰することが可能です。但し、大型犬の泣き声は400Hz程度の低音域帯になりますので、ほとんど音漏れを防ぐことは出来ないでしょう。
遮音性能試験の結果から、1000Hzから4000Hzまでの高音域では5.1デシベル~7.6デシベルと防音カーテンに高い遮音性能があることが分かりました。
6デシベル上がると、音圧レベル比で遮音性能は2倍になりますので、外部への音漏れを半減させることが出来るようになるでしょう。
2.防音カーテンの正しい選び方
2-1.おすすめ防音カーテン3選
2-1-1.防音性カーテン 「静」
引用:Amazon【完全遮光生地使用】1級遮光・遮熱で冷房効果UP ドレープカーテン!防音性カーテン 「静」
引用:Amazon
この製品をお勧めする理由は、コストパフォーマンスの高さです。100×178cmのサイズの場合、Amazonで5,280円(税込)で販売されています。
防音性能はグラフで明示されておりますが、あくまで参考程度にお考えください。とりあえず防音カーテンを試してみたいという方にお勧めします。
2-1-2.防音カーテン「コーズ」
3重構造が特徴の防音カーテン「コーズ」は、ペットの泣き声や楽器演奏音などの中音域から高音域を、吸音・遮音するのに優れています。2-1-1.でご紹介した防音カーテン「静」よりも価格は高くなりますが、遮音性能も高音域にかけてさらに高くなります。
防音専門のピアリビングで販売されている幅110cm×丈178cmの場合、価格は8,000円(税別)となりますが、編集部で第三者機関に依頼して遮音性能試験を実施したものはこちらの製品となります。
2-1-3.防音カーテン「サウンドガード3」
市販されている防音カーテンの中で、最も高い遮音性能を表示しているのが、こちらの「サウンドガード3」になります。
この防音カーテンの場合は、従来遮音が難しかった低音域の125Hz~250Hz帯においても7~9デシベルほどの遮音性能が謳われています。
質量が1.2Kg/㎡と一般のカーテンと比較して非常に重く、この重さが遮音に対して有効に作用することが期待できます。周波数全域に対して遮音性が高いこの製品であれば、ピアノなどの楽器演奏音に対して高い遮音効果が見込めるでしょう。
サウンドガード3の製品価格は、幅81~170cm(2巾)、丈161~180cmの共布なしタイプが52,300円(税別)となります。
2-2.補足事項
遮音性能は質量に比例しますので、防音カーテンを選ぶ際には、少しでも質量が重いものを選ぶと良いでしょう。
防音カーテンは、窓との間に空気層を設けるように設置すると、空気層自体が音を減衰する効果がありますので、カーテンレールが2列になっている場合には、窓側ではなく室内側のレールに設置しましょう。
カーテンの丈は必ず床に接地する長さで発注しましょう。床とカーテンの間には絶対に隙間を設けてはいけません。巾は、2枚のカーテンがきちんと隙間なく重なる様に、十分な巾で発注しましょう。
防音カーテンを設置する際は、上部や側部、下部には隙間を一切設けない様にセッティングして下さい。隙間があると音が漏れて遮音効果が半減してしまいます。
3.自動車・電車・飛行機など交通騒音の正しい窓の遮音方法
3-1.DIYによる窓の遮音方法
自動車や電車などのゴーという低音域の騒音に対しては、グラスウールよりもロックウール製の吸音材が有効とされています。
引用:ヤマユウ MGボード
引用:アフィロガッター通信 MGボードと防音カーテンを併用したDIY防音の事例
ロックウール製の吸音材は、「MGボード」という製品が販売されており、厚さ50mmの価格は、605×910mmのMGボード8枚入りで、15,768円(税込)で販売されています。ロックウールは、単体ですとボロボロになってしまいますので、この製品の様に、厚手のガラスクロスで覆った製品を購入すべきです。
窓の大きさに合せてカットする際に、MGボード表面のガラスクロスを切らずにロックウールだけをカットするようにして、ガラスクロスで端部を覆うようにすると、両面テープで容易に窓枠に接着が可能になります。
窓に直接MGボードを貼らずに、なるべく多くの空気層(窓ガラスとMGボードの間の隙間)を設けて窓枠に両面テープで接着すると遮音性能が期待できます。結露を予防するために、空気層には吸湿剤のシリカゲルを設置してください。
3-2.ワンタッチ防音ボード
DIYは上手に出来るか不安、面倒だとお考えの方には、窓のサイズにピッタリとオーダーメイドで作成してもらえる「窓用ワンタッチ防音ボード」という製品がお勧めです。
125Hzから5KHzの周波数において15.8デシベル~70.3デシベルもの遮音性能が謳われており、防音カーテンよりもはるかに高い遮音効果が見込めます。
この製品はDIYのMGボードと異なり、取手が付いているため取り外しが容易です。
価格は、幅1216~1835mm、高さ1506~1805mmの2連結タイプの場合に、98,000円(税別)になりますが、しっかりとしたパッキンが付いて密閉度が高いため、DIYのMGボードよりも高い遮音性能が確保出来るでしょう。
3-3.内窓
採光や眺望、通風を失わずに窓の高い遮音性能を得るには、「内窓」の設置が最も優れています。
引用:断熱防音奮闘日記
引用:インプラスト インプラス
内窓を設置すると、70デシベルの自動車走行音が図書館の静けさと同等の35デシベル程度まで減衰され、ほとんど気にならなくなります。
編集部では、過去に幹線道路沿いの鉄筋コンクリート造の住宅に住んでいた際に、窓に内窓を設置したところ、自動車走行音がほとんど気にならなくなるレベルまで減衰され、安眠出来るようになった経験があります。
一戸建てや分譲マンションにお住いの方で内窓の設置が可能な場合には、防音カーテンやワンタッチ防音ボードではなく、迷わず内窓を選択すると良いでしょう。
価格は、インプラスという製品の場合、マンションの平均的なバルコニーに面する掃出し窓のサイズで45,000円(税別)前後、工事代金が別途10,000円(税別)ほどかかります。
4.まとめ
防音カーテンでは、自動車走行音の様な交通騒音を防ぐことは出来ません。
交通騒音を確実に気にならない程度まで低減することが出来るのは、内窓の設置です。
但し、賃貸住宅の場合には、賃貸人の許可無く勝手に内窓を設置する事は許されませんので、ご注意ください。また退去時には原状回復(入居時の状態に自費で戻す)を要求される可能性があります。
従って賃貸住宅において窓の防音をしたい場合には、防音カーテンの設置が最も現実的な選択肢と言えます。もし防音カーテンだけで、騒音を防ぐことが出来ない場合には、MGボードやワンタッチ防音ボードなどを併用してみて下さい。
ペットの泣き声や楽器演奏音の中音域から高音域の周波数の音は、防音カーテンでも効果的に吸音・遮音することが出来ます。
編集部が測定した防音カーテンの遮音性能を参考に、過度にカタログ表記の防音性能を期待しすぎることなく正しく防音カーテンを選んで、騒音から解放されて安心した生活をお過ごし下さい。