窓から入ってくる騒音を何とかして止めたい、窓から外へ音漏れさせたくない、そんなあなたには採光や眺望を妨げない窓用防音透明シートがおすすめです。
窓の防音には「吸音」では無く「遮音」が必要です。従って質量の軽い吸音材を窓全面に貼りつけたとしても、音の響き(残響時間)が短くなる程度で、ほとんど防音効果はありません。
遮音性能は質量に比例しますので、窓を防音する為には重量のある遮音材を貼る必要があるのです。厚みのある窓用透明防音シートには重量があり、屋外の騒音を3分の1程度までに低減することが可能です。
また窓の横に有る事の多い吸気口の防音対策を同時にしなければ、窓だけを防音しても吸気口から騒音が入ってきてしまいます。
ここでは、実際に防音効果の見込める窓用防音シートや防音スリーブを紹介し、正しい施工方法や注意事項をお伝えします。
窓からの気になる騒音や、外へ漏れてしまう心配な騒音を低減して、安心した生活を送って下さい。
1.確実に防音効果が見込める窓用防音シート
1-1.窓の防音に最適な防音透明シート
窓(面の形状)の防音には、質量の軽い吸音材では無く、重量のある遮音材を選ぶ必要があります。従って軽量でスポンジの様な素材の吸音材では遮音性はほとんど期待出来ません。
窓からの採光や眺望を失わずに防音性能を高めるには、防音シートの色が透明である必要があるため、「窓用透明防音シート」が最適です。その他の遮音シートは不透明で、採光や眺望を妨げてしまいます。
引用:Amazon TRUSCO(トラスコ) 窓用防音透明シート UVカットタイプ 920mmX2m 厚み2mm TSFP2ST
窓用透明防音シートの価格は、920mm×2mの製品が25,670円(税込)でAmazonから購入でき、一般的な引違いの掃出し窓であれば2枚必要になりますので、およそ5万円の費用がかかります。
透明な防音シートは厚さが2.00mm有り、1㎡当たり2.46kgの重量があるため、下記の遮音効果試験データに示される様に高い遮音性能が見込めます。
このメーカーでは、遮音効果試験データがきちんと公開されており、実際の窓に施工した試験でも、確かな防音効果が出ている信頼性の高い製品と言えます。
写真:重量がある2mm厚の防音シート
低音の低周波帯から高音の高周波帯までの全域にわたって、12.9~33.3デシベルの高い遮音効果があります。この製品を実際に窓サッシにしわが無いように隙間なくきちんと張れた場合には、騒音がおよそ3分の1程度まで低減されたと体感できるはずです。
引用:TRUSCO 窓用防音透明シート UVカットタイプ 920mmX2m 厚み2mm
1-2.選んではいけない防音シート
1-2-1.プチプチシート
緩衝剤に利用されるプチプチシートは、質量が極めて軽く、「断熱材」としては多少の効果が見込めますが、遮音性能は全くと言って良い程ありません。
但し、採光と眺望は完全に無くなっても構わないとう場合には、プチプチシートを空気層代わりに何層か重ねて窓ガラス全面に張り付け、さらにその上に重量のある厚手の段ボールを何層か重ね張りして完全に窓を密閉することで、コストを抑えながら遮音性能を高めることは可能ですが、窓が全く開閉できなくなってしまう欠点もあります。
プチプチシートは紫外線でボロボロになるため、美観を損ねますし、こまめな張替えが必要になります。あくまで、窓からの冷気が寒い時などの緊急的な断熱補助用途として利用されることを推奨します。
引用:Amazon プチプチ(エアキャップ)シート・カット品
1-2-2.飛散防止ガラスフィルム
厚さが1mmに満たない飛散防止ガラスフィルムは、質量が軽いために遮音効果はほとんど有りません。
ガラスが割れた際の危険防止効果、紫外線カット効果、わずかな断熱効果があるだけになります。またガラスフィルムは、網入りの窓ガラスやペアガラスに直接貼った場合には、熱割れを起こす可能性も有ります。
賃貸住宅で勝手にフィルムを窓ガラスに貼って、ガラスが割れた場合には、全額入居者負担による原状回復が必要になりますのでご注意下さい。
引用:Amazon ニトムズ ガラス飛散防止シート M6120
1-2-3.遮音シート
2.0kg/㎡の遮音シートの場合には、窓用透明防音シートを若干下回る程度の遮音性能が有りますが、不透明なために窓からの採光や眺望は完全に無くなってしまいます。
暗室の様に完全遮光をしたい場合以外には、到底お勧めすることは出来ません。
この遮音シートは通常、単体ではなく石膏ボードと組み合わせて遮音材として使用される「建材」です。非常に重量があるため、両面テープなどで貼っても剥がれてきてしまうため、タッカーで留め、接着剤で接着する必要があります。
また、遮音シートは、施工後に石膏ボードなどで完全に覆わないと、かなり独特な匂いを発します。従って壁の防音対策にはある程度有効ですが、窓には使用すべきではありません。
2.窓用防音シートの施工方法
2-1.防音性能を向上させる施工方法
窓用透明防音シートは直接窓ガラスに貼るべきではありません。
防音シートを網入りガラスやペアガラスに貼った場合には、ガラスが熱割れを起こす可能性が有ります。透明で表面がフラットな単板ガラスであれば貼っても問題ありません。
従って下の図の様に、両面テープをガラス直接に貼るではなく、空気層を設けてガラス周辺部のサッシに貼ると良いでしょう。両面テープを貼る前に、ガラスやサッシは綺麗に清掃し十分乾燥させておいて下さい。
ガラス部に両面テープを張ってしまうと、防音シート越しにテープが透けてみえてしまうので美観的に優れませんし、ガラスに結露が起きた際には防音シートとガラスの間が濡れていまう可能性も有ります。
図のように長さが途切れることなく連続してサッシの四方に両面テープを貼り、両面テープに音漏れの原因となる隙間を一切作らないことが大切です。
窓ガラスと密着させずに、空気層を設けてガラスと異種素材である塩ビ製の防音シートを張ることで、コインシデンス効果を防ぐことが出来、遮音性能が効果的に向上出来るでしょう。
コインシデンス効果とは
ガラスなどの剛性材料に、ある周波数の音波が入射すると、その材料の屈曲振動と入射音波の振動とが一致し、一種の共振状態を起こす。この現象をコインシデンス効果という。 引用:weblio辞典
図:窓用防音透明シートの張り方
この施工方法を採用するメリットは、防音性能だけでなく、UVカットや断熱性能が見込めることです。家具やフローリングの日焼け防止の他に、結露防止効果やエアコン等の光熱費の節約効果があるでしょう。
両面テープは目立たない様にクリア色の透明度が高く粘着力が高いもので、窓ガラスの大きさに合わせて必要な長さの両面テープをご用意ください。
引用:Amazon ニトムズ 超強力両面テープ 透明材料用 15mm×4M T4612
賃貸住宅の場合には、退去時に綺麗に両面テープを剥がせば、窓用防音透明シートは再利用が可能です。サッシに残ってしまった両面テープを剥がす際には市販のテープ剥がし材などを利用して、サッシに傷をつけない様に丁寧に作業を行ってください。
2-2.注意事項
引違い窓の引き込まれる側のサッシに防音シートを張った際に、シートの厚みがひっかかり窓の開閉に支障をきたす事が想定される場合には、空気層を設けずにガラス面に直接両面テープで防音シートを貼らないと窓の開閉がスムーズに出来なくなるおそれがありますのでご注意下さい。
窓用防音シートは大きく重い為に、窓サッシに張るのは非常に難しいので、誰かに手伝ってもらい二人で作業すると良いでしょう。
また雨の日等、室内の湿度が高い時に作業を行うと、防音シートとガラスの間に湿気を閉じ込めてしまい、結露を誘引してしまいますので、天気の良いカラッとした日に作業を行うべきです。
結露対策として、空気層には市販のシリカゲル(吸湿剤)を忘れずに入れておいて下さい。
3.同時に行うべき吸気口の防音対策
窓ガラスから入ってくると感じる騒音は、窓ガラス以外にも窓付近の吸気口からも入ってきます。従って、窓ガラスの防音対策を行う場合には、同時に吸気口の防音対策も実施すると防音効果を実感しやすくなります。
お住まいがご所有されている一戸建ての場合には、吸気口の屋外側についているベントキャップを遮音性能の高い防音タイプに変更すると、吸気口からの騒音を大幅に低下出来ます。写真の製品はT-4等級(40デシベル)の遮音性能があります。
写真:防音型ベントキャップの例
引用:シルファー BSF角型防音フード
ここでは、ベントキャップの交換工事が出来ないマンションや賃貸住宅にお住まいの方のために、防音工事を必要とせずに、吸気口からの騒音を低減出来る方法をお伝えします。
3-1.防音スリーブ
吸気口から入ってくる騒音を低減するためには、吸気口のパイプ(スリーブ)の中に入れる「防音スリーブ」という製品が最適です。
この製品は取り外しが容易なため、賃貸住宅などの退去時の原状回復が必要な建物であっても設置が可能です。
取り付けられている吸気口の口径(丸い筒の部分の直径)を調べて、適合したサイズの製品を購入して下さい。通常は直径100mmサイズまたはレンジフード換気用の大きいサイズ150mmの吸気口が取り付けられていると思います。
設置方法ですが、最初に室内側についているレジスターのカバーを慎重に取り外して下さい。取り外し方はマンションであれば、住まいのマニュアル(取扱い説明書)の中に冊子が入っているはずです。
吸気口の例:プッシュ式レジスター
写真の様に、製品自体に機種名が記載されている場合もあります。目視で機種が分かれば、インターネットでも蓋の取り外し方を検索できます。
取り外しが成功したら、プラスチック製のパイプの筒の中に、防音スリーブ製品である「防音パイプ」を挿入して下さい。防音パイプは1つの吸気口に通常2個入ると思います。2個入れた方がより防音性能が高まります。
写真の防音スリーブの製品価格は、Amazonで口径100mm用が2個入りで474円(税込)でした。
引用:Amazon 大建プラスチックス 防音パイプ グレー 100NS
口径100mmの製品の場合は、カタログ値で14~30デシベル騒音が低減しますので、設置後に騒音が小さくなるのをはっきりと確認出来るでしょう。
3-2.注意事項
防音スリーブを設置すると、防音性能が向上する反面、パイプの中の空気が通り抜ける面積が減少しますので、換気効率が下がってしまう恐れがあります。
したがって、窓を開けるなどして、定期的な換気が必要になります。
また、防音パイプは空気の汚れを吸着するおそれがありますので、屋外側にある吸気口の蓋にフィルターを設置すると、防音パイプの汚れを減らすことが出来る様になりますので、実践してみて下さい。
引用:東洋アルミ 通気口用 フィルター パッと貼るだけ 屋外用 3枚入
4、まとめ
もしお住まいが自己所有されている一戸建てやマンションであれば、あなたが選択すべき窓の防音対策は、窓用防音透明シートではなく「内窓:インナーサッシ」です。今ある窓の内側にもう1枚の窓ガラスを設置して二重サッシにすると、耐用年数が非常に長く防音シートよりも優れた防音性能を長期安定的に発揮する事が出来ます。
しかし、賃貸住宅の場合には、賃貸人の承諾無しに勝手にインナーサッシの追加工事を行うことは出来ません。他の部屋と差が出てしまうので、承諾を得ようと思ってもなかなか賃貸人から許可が貰えないでしょう。
賃貸住宅の窓の防音対策を行う場合は、ここでご紹介した窓用防音透明シートを張る事が最も現実的であり、十分に体感できるほどの防音性能を確保できるはずです。
自宅で録音(宅録)や楽器演奏などをするために、一時的に窓からの眺望や採光が完全に失われても構わないという方には、防音シートではなく、「窓用ワンタッチ防音ボード」が最適です。窓のサイズに合わせてぴったりとオーダー出来ますので、防音シートよりも高い遮音効果が見込め、防音カーテンも併用可能です。
価格は、バルコニーに面する一般的な掃出し窓のサイズ(幅1216~1835mm・高さ1506~1805mm)で、98,000円(税別)です。
また窓からの騒音で夜に眠れないという方の場合は、音は距離でも減衰するため、ベッドの枕の方向を窓から離れた位置にすることも効果があります。
ぜひ防音をしっかりと理解して、騒音から解放され安心した生活をお過ごし下さい。