下階からの騒音クレームに怯えながら、いつも心が落ち着かない生活をしていませんか?
正しい組み合わせの防音マットを床に敷くことで、下階へ伝わる子どもの足音やピアノ鍵盤の振動音等を大幅にカットする事が出来ます。
実際に室内に設置するとほとんど防音効果が得られないにも関わらず、単品で大幅な防音効果があると誤認させるような防音製品の広告を多く見かけます。
防音を行うためには、「遮音」「吸音」「制振」の3つを適格に組み合わせなければなりません。
防音に関する正しい知識を身に付け、あなたの目的に合った最適な防音マットを選択して下さい。
騒音問題を解決して、他の住人からの騒音クレームに怯えること無く、安心した日常生活をお過ごし下さい。
1.子どもの足音を防ぐ床防音マットの選び方
1-1.子どもの足音を防ぐ防音マットの種類
子どもの足音が階下に響くことを防ぐためには、床にドンドンという衝撃音を伝えないことが大切です。
そのためには床に厚手の防音マットを敷く必要がありますが、お子様の年齢によって体重や行動が変化しますので、選ぶべき製品が変わってきます。
ここでは3歳未満と3歳以上の年齢区分に分けて、厚さや機能の異なる2種類の防音マットをご紹介します。
①3歳未満の幼児におすすめの防音マット
3歳未満の乳幼児に最もお勧めできる防音マットは、お手入れが簡単な「ジョイントマット」です。
3歳未満の乳幼児は4歳以上のお子様に比べて体重が軽いため、防音マットの厚さは多少薄くても大丈夫です。しかし、食べ物や飲み物を頻繁に床にこぼす可能性がありますので、防音マットを選ぶにあたっては、清掃のしやすさを重視する必要があります。
引用:ニトリ ジョイントマット
写真のニトリの製品は厚さが1センチ有り、価格は約29.5cm角の通常サイズが1枚当たり435円(税別)、約57センチ角の大判サイズが833円(税別)です。広い面積に敷く場合には、大判サイズの方がコストは安くなります。
部屋の床全面に敷きたい場合は、大判サイズを敷き詰めて余分な部分をカットすると良いでしょう。
EVA素材のジョイントマットは、防音性が高く、撥水効果が高いためにさっと汚れをふき取り、簡単にお掃除が可能です。
おむつ交換などを考えるとカーペットの様な吸水性のある素材では、しみ汚れだけでなく、雑菌の繁殖やアレルギーなどの心配もあります。
従って、3歳未満の乳幼児の足音を防ぐためには、撥水性があり分解が可能なジョイントマットが最適です。
②3歳以上のお子様におすすめの防音マット
3歳以上のお子様の足音を防ぐための防音マットは、「低反発フランネルラグマット」がオススメです。
2センチ程の厚さがある低反発フランネルラグマットなら、高い制振性によって階下に足音をほとんど伝えません。
3歳以上のお子様の場合は、成長に合わせて体重が重くなるために、3歳未満の時と比較して床衝撃音が大きくなります。階下に振動を伝えない為には、より厚みがあり制振性の高い防音マットを選ぶ必要があるのです。
2センチほどの厚みがある低反発フランネルラグマットは、足音対策として極めて優れた性能を発揮しますが、ジョイントマットの様に部分的に取り外せないために簡単に水洗いが出来ず、清掃がやや困難になります。したがって3歳未満の乳幼児にはあまりオススメ出来ません。
足音を階下へ伝えない性質をもつ低反発フランネルラグマットの中で、他を圧倒する高い遮音性能である△LL(1)-7以上を誇っている製品をご紹介します。
床暖房にも対応した下の写真の製品の場合は、130cm×190cmで、価格は5,538円(税込)となっており、「マンションにも安心の遮音性」を謳っています。
引用:ライムライムインテリア 低反発フランネルラグ フォレス/130×190cm(約1.5畳サイズ)
この低反発フランネルラグ製品の場合は、床衝撃音の低減量等級ΔLL(I)-7以上を取得しており、「上階の気配をまったく感じない」非常に高い防音性能を表示しています。この様にきちんと第三者機関によって測定された防音性能を公表している防音製品を選択することが大切です。
製品サイズは、60×120cm、60×180cm、60×240cm、130×190cm、190×190cm、190×240cmの6種類が有りますので、あなたの部屋にあった最適なサイズを選択して下さい。
廊下にもキッチンマット用の幅60cmタイプを敷けば、子どもが歩行するほとんどの部分を覆う事が可能になるでしょう。
1-2.床全面を覆う防音マットの施工方法
足音などの床衝撃音だけでなく、階下へ伝わる空気伝搬音(テレビの音や子どもの声など)も減衰させるためには、床全面に下地材として遮音性能と制振性能のある防音マットを敷いた上に、吸音性能のある防音マットを仕上げに敷くと良いでしょう。つまり2種類の防音マットを現在の床材の上全面に敷き詰めます。
参考画像:2種類の防音マットの組み合わせにより高い防音性能を実現する方法
引用:ホームセンターヤマユウ
下地に敷く防音マットには、遮音材として質量が重く、さらに制振材として高い弾性(ゴムやバネのような力を除くと元の形に戻る力)が求められます。
1-1でご紹介したジョイントマットや低反発フランネルラグは床衝撃音に対しては有効ですが、質量が軽いために人の声などの空気伝搬音に対しての遮音性能はほとんどありません。従って、質量の重い遮音制振材が必要となるのです。
遮音性と制振性の両方の機能を満たす防音マットは、ゼオン化成のサンダムE-45がオススメです。ゼオン化成は信頼の置ける防音建材メーカーであり、サンダムE-45の面密度(㎡あたりの質量)は6.8kgになり、単体でおよそ10デシベル程度の遮音性能があります。
引用:ゼオン化成 防音床下地材
この床下地材(サンダムE-45)の上に、仕上げとして吸音性能のあるタイルカーペットなどの防音マットを敷くことで、防音の3条件である「制振」「遮音」「吸音」の全てを満たすことが出来る様になるのです。
吸音性能のある仕上げ用の防音マットとして、日東紡マテリアルの「静床ライト」をお勧めします。
このタイルカーペットは、軽量床衝撃音遮断等級で、スプーンなどのものを落とす音が「ほとんど聞こえない」レベルまで減衰される「LL-40等級」を誇る確かな商品です。
タイルカーペットのメリットは、好みの色の組み合わせによって空間をデザイン出来る点と、汚れた部分だけ取り外して洗えるメンテナンスの容易さにあります。
表面がツルツルしているフローリングと異なり、表面がボコボコしているカーペットには吸音性能もあるため、総合的に床の防音性能を高めることが出来る様になります。
編集部では、鉄筋コンクリート造住宅の3帖ほどのエレキギター練習室において、床全面にサンダムE-45と静床ライトの組み合わせでDIY防音を施してみたところ、階下に漏れる音が2分の1程度に減衰されているのを実際に耳で確認しています。
1-3.補足事項
子どもの足音を防ぐために床の防音性能を高める方法をお伝えしてきましたが、子どもの声や室内で発生する様々な音を階下や隣接住戸へ伝えない為には、床だけでなく、窓やドアなどの開口部のほかに、天井や壁など全ての面に対して総合的に防音をしなければ、高い防音性能は望めません。
本格的な防音を希望される方は、DIYでは無く防音専門の会社へ防音工事を依頼すると良いでしょう。
2.ピアノ打鍵音を防ぐ床防音マットの選び方
2-1.ピアノ用防音マットの種類
①電子ピアノ用防音マット
電子ピアノの場合は、ヘッドホンの装着によって演奏音(空気伝搬音)をゼロにすることが出来る一方で、打鍵音(衝撃音)は減衰する事が出来ない欠点があります。
鍵盤を叩く指の力がそのまま床へ振動として伝わってしまうためです。
引用:福山楽器センター Roland ローランド ピアノ セッティング マット HPM-10
電子ピアノの打鍵音対策用の防音マットとしてお勧めできる製品は、ローランド製のHPM-10になります。定価16,800円(税込)ですが、福山楽器センターでは14,780円(税込)で販売されています。
お勧め出来る理由は、信頼のおける楽器メーカーであるローランドが開発し、防音性能(衝撃音の減衰量)をきちんと公表している点にあります。
②アップライトピアノ用防音マット
アップライトピアノは通常250kg前後の過重が有り、4本の足の先にそれぞれキャスターが付いています。従って厚さの薄いカーペットの様な防音マットでは、キャスターの1点に60キロほどの荷重がかかり、過重や打鍵による衝撃がマット全体に分散されずに、階下に振動が伝わってしまう可能性があります。
アップライトピアノの打鍵音対策として優れているのは、「防振用インシュレーター」です。
防振インシュレーターは各社から様々な製品が販売されていますが、ここでは地震時のピアノ転倒や横滑りを防ぐタイプの製品をご紹介します。
裏面が滑りやすい素材で簡単にピアノを移動出来るタイプの防振インシュレーターは、大地震の際にはピアノ本体が大きく揺れ動くことが予想されるため、お勧め出来ません。
引用:信越工業 NEWSTOP
信越工業の「ニューストップ」は特許を取得している信頼のおける製品になります。
価格はアップライト用(1セット4個組)黒色が18,900円(税込)、茶色が23,100円(税込)、取付手数料が8,400円(税込)となります。
耐震性試験の結果を発表しており、300~400ガルとされる関東大震災と同等規模の振動波に対して、ピアノが台座ごと2~3cm移動しただけという安心出来る試験結果となっています。
ピアノを設置する床が畳やじゅうたんの場合には、防振インシュレーターが床にめり込んでしまい、十分な防振効果を発揮出来ない可能性があります。
この場合には防振インシュレーターの下にピアノパネルを設置するとピアノを安定設置させることが出来ます。
写真のピアノパネルの価格は18,900円(税込)となっています。
打鍵音対策として、防振インシュレーターとピアノパネルを組み合わせることで防振効果はさらにアップするでしょう。
引用:信越工業 ピアノパネル
アップライトピアノの響鳴板は背面にありますので、演奏音(空気伝搬音)を減衰したい場合には床では無く、背面に防音パネルを設置すると有効です。
ピアノ背面に設置する代表的な防音パネルには、東京防音製の防音ECOパネル(TSP-2100)定価64,800円(税込)がありますが、販売店ベスト・サウンド・ラボでは38,600円(税込)で販売されています。
引用:ベスト・サウンド・ラボ
15~22デシベルほどの遮音性能がありながら、演奏者側にはパネル装着前とほとんど変わらない音量で聞こえ、背面側からは音を効果的に遮断して壁へ当たる音圧を和らげる効果があります。
③グランドピアノ用防音マット
グランドピアノの打鍵音対策としては、アップライトピアノと同様に防振インシュレーターが有効です。
信越工業製のNEWSTOPの場合は、グランドピアノ用が黒色14,700円(税込)/個となります。
足が3本になりますので、防振インシュレーターは3個必要になります。
参考:信越工業 NEWSTOP http://shinetsukogyo.co.jp/sulator.htm
グランドピアノの場合は響鳴板が下面にありますので、打鍵音だけでなく演奏音も減衰させるためには、上蓋を閉じるのは当然として、下面の響鳴板に対して同じ形の防音マットを下から突っ張り棒で押し付けると、ピアノ本体に傷を付けることなく音圧レベルを下げることが可能になります。
東京防音のスーパーミラクルソフトは、響鳴板用防音マットの単体性能で29デシベルもの音圧減衰効果を謳っていますが、ピアノ下面の響鳴板以外からも音が出ますので、実際の防音効果は動画で確認してみてはいかがでしょうか。
C3サイズまでのグランドピアノ用が91,800円(税込)、C5・C6サイズ用が106,200円(税込)となります。
2-2.補足事項
ここまでピアノの打鍵音(衝撃音)対策用の防音マットを紹介してきましたが、ピアノの演奏音(空気伝搬音)を減衰させるためには、床に敷くタイプの防音マットだけではほとんど効果を得ることは出来ません。
ピアノの演奏音は空気を伝って部屋全体に広がるために、床の他にも天井や壁、窓、ドア、換気口などのあらゆる場所に対して防音工事を行わなければ遮音することは出来ませんので、床の一部分に高性能な防音マットを敷いたところで、他の部分から階下や隣接住戸へ音が漏れてしまうことでしょう。
参考画像:ピアノ打鍵音に効果があるが、演奏音の階下への騒音低減効果は期待できない防音マットの例
3.選んではいけない防音マットの種類
インターネット上では防音マットと防音シートという言葉が混同されて使われている様です。
防音シートとは、基本的に遮音シートなどの建材を指します。遮音シートは厚さが1~2ミリ程度と非常に薄く、単体で床に直接敷いただけではあまり効果がありません。
防音(遮音)シートは、主として壁や天井内部の遮音材として使用され、その上に石膏ボードなどを重ねて貼る事で初めて防音性能を発揮する「建材」になります。また取付けに際しては、重量があるためタッカーなどの専用工具によって下地に取付けなければならず、わずかな隙間からも音が漏れてしまうために、DIYで簡単に利用できる様なものではありませんので、床の防音対策用の防音マットとして安易に選ばない様に注意して下さい。
特に鉛シートの場合は、口から摂取すると強毒性があるため、子どもやペットが直接手や口に触れるような場所に露出させて設置してはいけません。
引用:住材マーケット 防音シート(遮音シート)940SS GB03053 大建工業 軟質遮音シート
4.まとめ
子どもは成長にあわせて部屋を自由に動き回れるようになりますので、どれほど親が気を付けても足音などの騒音は発生してしまいます。
床全面に適正な防音マットを敷くことで、階下への騒音を気にならないほどに小さくすることが可能です。
ピアノの打撃音は、気付かないうちに階下へ振動となって伝わってしまい、他の住人に迷惑をかけている可能性があります。電子ピアノであっても床に正しい防音マットを敷いて、騒音被害が出ない様に配慮しましょう。
アップライトピアノやグランドピアノの演奏音を減衰させるためには、床に敷くタイプの防音マットでほとんど効果がありません。まずは本記事にある響鳴板に設置するタイプの防音マットでピアノから発生する音を小さくする工夫をしてみてはいかがでしょうか。
防音マットの正しい利用方法を理解して、他の住人からの騒音クレームに怯えることなく、安心した日常生活をお過ごし下さい。