日常生活の大半を過ごしている自宅マンションで、もし24時間思いっきり楽器演奏やカラオケなどの音出しが出来たら、どれほど自由に自分らしく人生の時間を過ごせるでしょうか?
これからご紹介する正しい防音工事を行えば、その夢は現実になります。
飛行機や鉄道、道路の交通騒音で眠れないというあなたの場合は、防音工事を行うだけで静かな落ち着く環境を手に入れることが出来るでしょう。
あなたがマンションでやりたいと考えている目的によって、必要な防音工事は異なります。
ここでは、お悩み別に騒音問題を解決できるマンション防音工事の事例を写真付きで紹介し、どこでどのような防音製品を購入するべきか、どの程度の防音工事をしたらよいのかなど、騒音から解放されたい、他の住人からのクレームを受けないか、他人に迷惑をかけていないか心配など、悩むあなたに役立つ情報を紹介します。
ぜひマンション防音工事に関する正しい知識を身につけて、他人に気兼ねすることなく思いっきり音を出せる環境や、安心して生活できる静かな環境を手に入れましょう。
1.防音工事を行うあなたが最低限知っておかなければならない防音関連用語
1-1.なぜ防音関連用語を知っておかなければならないのか?
あなたが防音関連用語を知っておかなければならない理由は、正しい知識を身に着けて防音工事を依頼しなければ、防音本来の「騒音を防ぐ」という目的を達成する事が極めて困難だからです。
音が小さい、大きい等と感じる耳の聴覚は人によって個人差が有り、自分だけでなくマンションの不特定多数の人に対しても騒音が聞こえないと感じてもらうためには、特定の騒音に対して十分な遮音性能基準を満たさなければなりません。
これから遮音性能基準を満たすための防音工事に必要な関連用語についてお話しいたします。
1-2.知っておかなければならない防音関連用語
1-2-1.音の大きさ(デシベル)
音の大きさは、音圧レベルできまりdB(デシベル)という単位で表します。
ジェット機の騒音が110~130dBであり、ドラムの演奏音はほぼ同じ音の大きさとなります。ピアノ演奏音は90~100dBであり、地下鉄構内と同じ騒音レベルです。
図にある様に40dB以下の騒音レベルとすることで、「静か」または「きわめて静か」な環境とすることができます。騒音の全く無い0dBという世界は無響室内の状態であり、このレベルまで音圧レベルを下げてしまうと、自分の呼吸音や服が擦れる音などが気になってしまい、生活を送る上では全く落ち着かなくなってしまうでしょう。
従って住空間の音圧レベルは完全にゼロを目指すのではなく、20dB~40dB程度となる様に防音工事を行うと良いでしょう。
図:音圧レベル(dB)の特徴
引用:姫路の住まい.com
1-2-2.音の高さ(ヘルツ)
音の高さは、「周波数」でHz(ヘルツ)という単位で表します。
数字の小さい63Hzが低音域、数字の大きい8KHz(8000Hz)が高音域となります。
ピアノの鍵盤の場合は、鍵盤番号1の「ラ」が27.5Hz、鍵盤番号88の「ド」が4186Hzとなります。
基準音として使用されるピアノ鍵盤の49番目の「ラ」の音には440Hzの音が使われています。
周波数が半分になると、1オクターブ低くなり、周波数が倍になると1オクターブ高くなります。
1-2―3.遮音性能基準
遮音性能は、透過損失にて表され音源からの音を壁や床を隔てて聞いたとき、どのくらい音が小さくなったかを透過損失(dB:デシベル)にて表します。
出典:日本建築学会「建築物の遮音性能基準と設計指針」
図により、ピアノの演奏音を隣室で「通常では聞こえない」レベルまで下げるためには、D-65以上の遮音性能としなければならない事が分かります。これらの防音関連用語をしっかりと理解して、目標とする遮音性能基準を業者に確認して、防音工事を依頼しましょう。
2.楽器演奏をするための防音工事事例
2-1.楽器演奏を目的とした防音工事の必要性
楽器演奏を目的とする場合には、防音工事が必要です。
ピアノなどの楽器やカラオケに共通するのは、部屋の空気を伝って天井・壁・床・窓・ドアなどすべての箇所へ音が伝わってしますことです。
従って市販の防音グッズではそのすべての箇所に対応できないため、音を完全に止める事は出来ません。1か所でも防音性能が弱い箇所があると、そこから他の住戸へ音が漏れてしまうからです。
図:楽器別の「音の大きさ」と「音の高さ」
楽器別測定音圧レベルデータより編集部作成
図により、楽器別の音の大きさと音の高さを知る事が出来ます。ドラムは低音がから高音までの全ての周波数帯でほぼ100dBを超える大音量であり、ピアノは500Hz帯で一番大きな100dB程の音量となり、トランペットでは1KHzを超える高音域の音が100dBを超える非常に大きな音量を出すことが分かります。
ピアノ演奏音は、フォルテッシモでは響板付近でジェット機のエンジン音に匹敵する110dB、1m離れた地点でも地下鉄構内と同じ100dBもの音量に達します。これをマンションの上下左右の隣接住戸でほとんど聞こえなくするためには、D-65以上の遮音性能を目標とした防音工事が必要となるのです。
2-2.楽器演奏を目的とした防音工事でオススメできる2つの方法
2-2-1.Box in Box工法を用いた防音工事
事例:マンションリビングでグランドピアノ演奏を実現したサウンドプルーフ中目黒
防振対策と遮音対策としてもっとも優れている工法は「Box in Box(ボックスインボックス)工法」と呼ばれ、コンクリートの構造体(壁や床・天井)による「箱」のなかにもう一つの「箱」を浮床構造でつくる工法になり、個体音と空気音に対して大きな効果が得られます。
ドアや窓はそれぞれの箱に独立して支持した二重サッシや室内防音ドアを設けた二重防音構造とします。
「完全防音」という言葉を良く目にしますが、全ての騒音を完全にゼロにするのではなく、特定の騒音だけを対象に限りなく聞こえない状態にするという意味になります。この完全防音を目指すにはBox in Box工法しかオススメ出来ません。
Box in Box工法を採用せずに、コンクリートの躯体にボンドを使って空気層を設けずに石膏ボードを直接張る方法をGL工法と言いますが、コインシデンス効果(共振効果)によって、遮音性能はコンクリート躯体単体のときよりも、悪化してしまう場合があります。ですから、高い防音性能を確保ためには、必ずBox in Box工法を選択しましょう。
図:Box in Box工法を採用した防音室の事例
引用:ヤマハ 防音室(アビテックス)
①浮床の対策
まず浮床の構造ですが、過重や施工性の問題などから、質量の軽いゴム製の防振支持材を利用し、床下にグラスウールを充填した乾式の二重床とする事例が一般的です。
乾式二重床では、求める遮音性能・制振性能に応じて、下地材の組み合わせが異なる様々な製品バリエーションがあります。どの様な楽器を演奏するかによって求められる性能が異なり、床暖房に対応しているタイプとしていないタイプ等もありますので、予め演奏楽器や床暖房を設置するか等を決めておいて、工事業者に正しく伝えましょう。
図:ゴム製防振支持材を使用した乾式二重床の事例
引用:万協フロアー
乾式とは・・・防振ゴムのついた支持脚等によって建物のコンクリート床から浮いた床構造で、内部が空気層となっているもの 湿式とは・・・建物のコンクリート床の上にグラスウール等の緩衝材を載せ、その上にさらにコンクリートを打設したもの |
パーカッションといわれる打楽器の様に、振動を発するタイプの楽器を演奏する場合には、床へ伝わる振動を制御するための制振構造が必要となります。床構造で最も制振性能の高い防音構造は、下図に示す湿式の浮床構造です。マンションの基本構造のコンクリートの床の上に、グラスウールを敷き、その上にさらに8~10cm程のコンクリートを打設する湿式の浮床構造が最も信頼性が高いです。
図:湿式の浮床構造
出典:「分かりやすいマンションの防音設計」 平野滋 オーム社出版局
②壁の対策
次に、壁の構造ですが、下図の様にコンクリート躯体から背面空気層を設けて独立させた間柱を立て、間柱にPB(プラスターボードの略:石膏ボードの意味)の取付けを行います。
コンリート壁の内側に間柱を立ててGW(グラスウール)を充填した空気層を設けた方が、コンクート単体壁よりも、低音から高音までの周波数ほぼ全域で10dB程度遮音性能が向上しているのが分かります。
図:コンクリート壁の内装による遮音性能増加の例
出典:「分かりやすいマンションの防音設計」 平野滋 オーム社出版局
③ドアの対策
防音ドアは遮音性が高いスチール製のものもありますが、室内において裸足などの場合に、重量のあるスチールドアを使用すると足の指を挟んで怪我をする可能性が高いので、写真の様な木製防音室内ドアを選ぶと良いでしょう。
写真:防音ドアを設置した防音室の事例
写真:防音ドアのバリエーション
引用:ダイケン 防音室用室内ドア(スタンダード)
④換気扇の対策
防音室とする部屋の吸気口に写真の様なプッシュ式レジスターが取り付けられている場合は、フェイス(蓋)の裏面に遮音シートが貼られている遮音シート付の製品と交換するように工事業者に伝えましょう。演奏時に蓋を閉めると遮音効果が期待できます。
写真:プッシュ式レジスター
引用:ユニックス 室内樹脂製レジスター
通常のドアは、アンダーカットといってドアの下部に隙間が空いており、空気の通り道となっておりますが、防音ドアにすると室内の気密性が高くなり、浴室天井に取り付けられている24時間換気扇では換気が取れなくなる場合があります。
この場合には、同時吸排型換気扇を取付けしなければなりません。同時吸排気とは、1か所での穴で吸気と排気が同時に行える換気方法を示します。製品の価格は上がりますが、熱交換型の機種を選ぶと、換気による温度差が減ることで空調コストが安くなりますのでお勧めです。
部屋の吸気口や同時吸排型換気扇の外壁側(またはバルコニーの外壁)には、防音タイプのベントキャップ(防音フード)を取り付けることが出来れば、室内の音が屋外へ漏れにくくなり、屋外の騒音も室内に入りにくくなります。防音フードには、写真のような角型の他に丸型の製品もあります。
ベントキャップの交換や取付けにはマンションの管理組合の承諾が必要になりますので、ご注意下さい。既存のベントキャップのデザインや色に近い製品を選択すれば、承諾が得られやすくなるでしょう。
写真:防音型ベントキャップの事例
引用:シルファー防音フード
2-2-2.ユニットタイプの防音室設置
ユニットタイプの防音室とは、マンション室内に組み立て式の倉庫のような防音室を床の上に設置するものです。
ギター・ベース・バイオリン・ビオラ・チェロなどの弦楽器、トランペットまたはトロンボーンの様な金管楽器は80~100dB程度の音量が出ます。
ギター・サックス・バイオリン・クラリネットなどの小型の楽器の場合には、ヤマハのアビテックスやカワイのナサールなどのユニットタイプの防音ルームがオススメです。
おすすめできる理由は3つあります。
おすすめ理由1.ヤマハ・カワイともに楽器メーカーであることから、防音ルームの音質を重視した音響設計が施されています。
おすすめ理由2.ユニットタイプなら10日ほどのスピーディーな納品が可能で、設置も数時間から半日程度で終了しますので生活に支障なく防音工事が可能です。
おすすめ理由3.先ずは試してみたいという方のために、防音ルームのユニットタイプは購入する以外にレンタルする方法もあります。中古ならレンタル料7,000円・最短1年以上から選べます。
2-3.防音工事の費用
2-3-1.Box in Box工法の場合
マンションのピアノ防音対策として効果の期待できる「Box in Box工法」を採用した場合の防音工事費用の目安は、防音専門の工事会社へ直接発注した場合に、6帖で約200~250万円、8帖で約230~300万円、15帖では約400~550万円になります。
防音工事専門会社 | 6帖 | 8帖 | 15帖 |
防音工事費用 | 200~250万円 | 230~300万円 | 400~550万円 |
価格重視で選ぶならば、インターネットで複数の防音専門工事会社で見積もりを取ると良いでしょう。
日本を代表する楽器メーターのヤマハでは、アビテックスというユニットタイプの置くタイプの防音室を製造販売していますが、部屋の形状にあわせて自由にプランが作れるカスタムタイプ(自由設計)の防音室も作っています。
参考価格例(税抜価格) 8帖に設置の場合
アビテックス フリータイプ | 遮音性能Dr-30 | 遮音性能Dr-35 | 遮音性能Dr-40 |
Basic音場 | 2,876,000円 | 3,028,000円 | 3,845,000円 |
High Grade音場 | 3,146,000円 | 3,299,000円 | 4,122,000円 |
防音ドア1ヶ所、テラスサッシ1ヶ所、組立費、運送費、諸経費含む。ピアノ移動、エアコン工事、その他附帯工事は含みません。引用:ヤマハ 自由設計の防音室 AFEシリーズ
この表に書かれた遮音性能はアビテックス単体のものになりますので、マンションの基本構造が鉄筋コンクリート造の場合に、Dr-40のアビテックスを導入すると、隣戸間界壁・隣戸間界床でDr-65~Dr-70程度の遮音性能となります。 Dr値(JIS基準)はD値(日本建築学会基準)と同じ遮音性能の基準です。
遮音性能は重量に反比例しますので、鉄筋コンクリート造と鉄骨造では、重量の大きい鉄筋コンクリート造の方が建物の基本の防音性能が高くなります。
ヤマハのアビテックス フリータイプは8帖の防音室で3,845,000円~4,122,000円(税抜価格)と、他の防音工事会社と比較するとやや高額になりますが、歴史ある楽器メーカーらしく試験結果も公表されており、防音性能は信頼出来ますので、音響性能にとことん拘りたい方に特にお勧めします。
2-3-2.ユニットタイプの防音室設置の場合
ヤマハ アビテックス ユニットタイプの場合(税抜価格)
0.8帖 | 2.0帖 | 3.0帖 | 4.3帖 |
声楽・ギター・クラリネット・フルートが演奏できる広さ | アップライトピアノも設置できる広さ | グランドピアノが設置できる広さ | レッスンが可能な広さ |
580,000円~830,000円 | 980,000円~1500,000円 | 1,240,000円~1,750,000円 | 1,680,000円~2,270,000円 |
注)金額には組立費と運送費は含まれていません。参照:ヤマハ アビテックス
2-4.補足事項
リフォームの場合には、防音工事を行う部屋の既存の床や壁、天井を全て撤去する必要があり、工事後の室内の仕上げの種類によっても異なりますので、価格は現場によって開きがあります。
室内の響きの調整も重要です。防音工事では、主に天井や壁に吸音パネル等を設置する吸音方法が取られています。もしあなたがピアノの音を綺麗に響かせたいのであれば、床材はカーペットではなく、木質系のフローリングを指定しましょう。
楽器の中でもドラムセットや電子ドラムの場合には、重低音や振動を新築以外のマンションの防音工事で完全に防ぐのは極めて困難になります。一度、建物の鉄筋コンクリート躯体にドラムの振動が伝わってしまうと、他の階へも振動が伝搬してしまします。
電子ドラムであれば、音量をアンプで小さく設定できるので、大きな騒音は発生しないと思われる方がいらっしゃいますが、アンプを通じてバスドラムの重低音が他の住戸へ漏れて、何度もクレームが発生した結果、ドラムの演奏が一切禁止されてしまったケースもあります。
マンションでドラムを演奏したい場合には、新築時からドラム演奏に対応した全戸防音構造となっている防音賃貸マンションに引っ越すことをお勧めします。
ドラム演奏が可能な防音マンションの事例:サウンドプルーフプロ
3.ペットの泣き声対策をするための防音工事事例
3-1.ペットの泣き声対策を目的とした防音工事の必要性
ペットの泣き声対策をするには、小型犬などであれば皆さんが思っているほどの本格的な防音工事は必要有りません。
但し、大きな声を発する大型犬等の泣き声を隣接住戸へ聞こえなくするためには、2.楽器演奏をするためのマンション防音工事事例と同様の防音工事をしなければなりません。泣き声は、壁・床・天井・窓・ドアなどを通じて外部や隣接住戸へと伝わっていきますので、窓だけではなく、床、壁などを含めた総合的な対策が必要になります。
ペットは生き物であって教育などによって無駄吠えを無くすなどの、防音工事以外の防音グッズによる対策も可能です。ペットの泣き声の場合は、なんらかの防音対策をすることで、他人へ迷惑を掛けないように配慮していることをマンションの他の入居者等へアピールでき、何もしないよりも安心を得る事が出来ます。
従ってここでは、費用をかけた本格的な防音工事ではなく、外部へペットの泣き声を漏らさないための防音グッズによる解決方法についてお話しします。
3-2.ペットの泣き声対策を目的とした防音工事の種類
ペットの泣き声は、部屋の内側から窓を伝って屋外へ漏れ、さらに隣接住戸の窓から回り込んで侵入し、騒音となってしますケースがあります。
この場合、外部騒音の防音工事において後述する窓を二重にするという防音対策の方法が遮音性能を上げる効果が最も高いですが、もっと気軽に出来る対策として、防音カーテンの設置があります。
引用:ピアリビング
防音カーテンは、いろいろな製品が発売されていますが、密閉性の低いものではほとんど遮音効果は期待出来ないでしょう。少しでも隙間があれば音はそこから漏れてしまうからです。
密閉性の高い防音カーテンの場合には、図のように、大型犬の低い声(周波数250Hz)から小型犬の高い声(周波数500Hz以上)まで、防音カーテンの吸音性能が期待できるため、窓から外部への音漏れを減少してくれるでしょう。
図:防音カーテンの写真 引用:ピアリビング
防音カーテンには残響(音の響きの長さ)を小さくする効果があるため、音が響きすぎる部屋の場合に、設置する事で反響音が減って、テレビの人の声などが聞き取りやすくなる利点もあります。
またカーテンの開け閉めによって吸音効果を調整できるのが、防音カーテンの魅力の一つです。
3-3.ペットの泣き声対策を目的とした防音工事の費用
防音カーテンは、安価なものから高価なものまで沢山ありますが、安価なものの中には誇大広告のものが多いようです。編集部が第三者機関に依頼して防音カーテンの遮音性能試験を実施したこころ、全く防音効果がない製品もありました。
写真の密閉性の高い音漏れ防止共布ありタイプの防音カーテンの価格は、幅81~170cmの場合に、丈81~100cmが35,700円(税抜)、一般のマンションの掃出し窓に多い161~180cmの場合は56,100円(税抜)となっています。
3-4.補足事項
防音カーテンも高価格な製品の価格帯の場合には、もう少し費用を出せば、窓の内側にもうひとつ窓を追加するインナーサッシも防音工事の候補になります。カーテンを閉めて暗くなるのは嫌だと思う方の場合には、防音カーテンで遮音することよりも、今ある窓の内側にインナーサッシを追加する方が良いでしょう。この方法は詳しく後述します。
室内間仕切りドアや玄関ドア下部隙間からも音は漏れます。この場合には、市販の隙間テープを使用して下さい。価格は400円程度からあります。
ペットの泣き声の防音対策として、最も効果が高いのは無駄吠えを無くす効果的な「しつけ」です。そのためには日頃からペットと飼い主の信頼関係を強い絆で結びましょう。
4.子どもの足音対策をするための防音工事事例
4-1.子どもの足音対策を目的とした防音工事の必要性
子どもの足音対策の場合は、本格的な防音工事は必要有りません。
元気な子どもは室内で良く走り回りますし、小さいうちはよく物を床に落としますよね。しかし小さな子どももいつかは大人になるもの。短い期間のためにコストのかかる大規模な防音工事は避けたいですよね。
子どもの飛び跳ねには重量床衝撃音対策が重要です。重量床衝撃音とは、床に直接響くドンドンという音等です。逆に軽量衝撃音はスプーンを床に落とした場合などの、コンというような音等です。それぞれの騒音を最も簡単に解決する方法として、パネル式の防音タイルカーペットがあります。
4-2.子どもの足音対策を目的とした防音工事の種類
足音対策における防音工事で最も効果が期待できるのは、2-2-1.Box in Box工法を用いた防音工事で紹介したような防音二重床とすることです。
しかし既にフローリング張りとなっているマンションの床下地を全室全て作り直すとなると、既存の床を全て撤去しなければならず、引越しが必要になるために、子どもがいる家庭ではあまり現実的ではありませよね。
従って、引っ越しや大きな費用のかからない防音対策として、タイルカーペットをお勧めします。
通常のカーペットと比較して、タイルカーペットの利点は3つあります。1つ目は必要な枚数だけ購入してコストを抑えられること。2つ目は市松模様など色々なデザインに組み合わせることが出来ること。3つ目は汚れたら部分的に張替えが可能なことです。
フローリングなどの床の上に、防音カーペットを敷くことで、軽量衝撃音と重量衝撃音の両方を効果的に減らすことが可能です。素材も布地のもののほか、コルクのものもあり、インテリアの好みで選択が可能です。
図:生活音をカットする防音タイルカーペット 引用:ピアリビング
4-3.子どもの足音対策を目的とした防音工事の費用
約6帖の部屋を防音性の高いフローリング張りの二重床にした場合の費用は、解体や廃材処理だけで約5万円程かかり、総費用は約16~20万円になります。また使用するフローリングに無垢材などを選ぶとさらに高額になります。
写真の防音タイルカーペットは、40cm×40cm×厚さ10mmのものが1枚560円(税抜)ですので、6帖で約34,000円(税抜)になります。
2mm厚のコルクタイルカーペットであれば、約6帖用で10,990円(税抜)で出来ます。
引用:ニッセン コルク2mm厚防音タイルマット(大判45cmタイプ)
4-4.補足事項
フローリングなどの表面がツルツルした素材と異なり、クッション性のあるタイルカーペットには子どもが転倒した際に怪我を防ぐ効果もあります。
子どもは元気にすくすくと育って欲しいものです。しかし階下への騒音の影響を考えると、マンション室内では子どもに飛び跳ねをしない様に教育を施すのが一番です。
室内でボール蹴りなどをさせずに、身体を動かすために親がなるべく頻繁に公園などの屋外へ連れて行ってあげると良いでしょう。
5.外部からの騒音対策をするための防音工事事例
5-1.外部からの騒音対策を目的とした防音工事の必要性
外部からの騒音は主に窓や隙間から入ってきます。ドア下部の隙間の塞ぎ方は前述した隙間テープを利用することで有る程度防ぐことが出来ます。
しかし、窓全体からの騒音を完全に防ぐには、防音カーテンなどの防音グッズでは対応することは出来ません。
DIYで窓ガラスに防音シートなどを張る方法もありますが、眺望や室内の明るさが失われますし、ほとんど防音効果も期待出来ません。
5-2.外部からの騒音対策を目的とした防音工事の種類
ここでは開口部である窓の遮音性能を効果的に上げる方法をお伝えします。窓の遮音性能を上げるには、大きく分けて2つの方法があります。
一つ目は、窓を現在の普通サッシから防音サッシへ取り替える方法。
二つ目は、今あるサッシの内側に防音サッシを追加する方法です。
引用:LIXIL インプラス
図:普通サッシと防音サッシの違い
出典:「分かりやすいマンションの防音設計」 平野滋 オーム社出版局
図に示す様に、普通サッシを防音サッシに交換するよりも、内側に防音サッシを追加する方法の方が遮音性能は大幅に向上します。また現在のサッシの取り外しが必要ないので、工事は窓1枚なら1時間で終了します。
サッシとサッシの間の空気層が大きいほど、基本的に遮音性能は向上します。
5-3.外部からの騒音対策を目的とした防音工事の費用
マンションンの標準的な引違窓W1500H1900の場合は、LIXILインプラス単板ガラスで68,000円、複層ガラスで定価92,000円となっていますが、工事会社によっては定価から45%オフなどの割引を行っています。
参照:窓一番館
既存のサッシが複層ガラスの場合には室内側は単板ガラスでも良く、単板ガラスの場合には、複層ガラスのインプラスを設置した方が、いやな結露が減って快適に過ごせるでしょう。
5-4.補足事項
インナーサッシを追加する利点は、防音性能だけでなく、断熱性能の向上にもあります。部屋が急に暑くなったり寒くなったりしなくなることで、夏場や冬場のエアコン代が大きく節約できるでしょう。
マンションの窓枠および窓ガラスは標準管理規約では共用部分となっていますので、管理組合の承諾なく勝手に交換や窓枠の追加をしてはいけない事になっていますので注意してください。詳しくは管理規約を確認頂くか、管理組合にお尋ねください。
6.絶対知っておくべき!防音工事を注文する際の注意事項
6-1.床だけ。壁だけ。部分的な防音工事では効果が期待出来ない
防音製品や防音グッズを扱っている店等において、床材や壁材などの商品単体で遮音性能○dBなどと謳っている広告を良く見かけます。
しかし壁だけ、床だけなど一部の箇所の遮音性能を向上させても、その他の部分に遮音性能や気密性が低い部分があると、水が流れる様にそこから音が漏れ出してしまいます。
ですから全面的な防音工事が必要になるのです。
6-2.賃貸マンションでも防音工事は可能
意外と思われるかと思いますが、賃貸マンションでも防音工事が可能になる方法があります。
賃貸マンションと分譲マンションの違いは、原状回復義務があるかないかです。賃貸の場合には、退去時に入居したときの原状(もとの状態)に戻さなくてはなりません。従って賃貸で防音工事を行う場合は、壁に穴を空けたりせずに、なるべくもとに戻す費用が掛からない方法が良いでしょう。
壁に粘着力の弱い両面テープで防音パネルを張る方法などもあります。しかしこの方法の場合には、しばらくしてから剥がれてきてしまう事があるのが欠点と言えます。
どうしてもしっかりした防音工事を行いたい場合には、事前に大家さんに許可を貰いましょう。無断で工事を行った場合には、賃貸借契約条項によっては解約となってしまう場合も考えられます。防音工事の許可を貰った場合においても、大家さんが承諾しない限りは退去時には原状に戻さなければなりません。
6-3.今さら聞けない!分譲マンションの防音規約
ほとんどの分譲マンションにおいて、隣接する住戸への音の配慮として、管理規約の中で防音規定を定めています。
マンションには不特定多数の方が住みますので、フローリングなどの床材は一定の基準を満たした遮音性能の高いものを選び、階下の住人へ配慮しましょうという事です。
基準は遮音等級L-45またはL-40の場合がほとんどで、L値の数字は小さい方が厳しい基準となります。D値やDr値の場合は数字が大きいほど、遮音性能が高いので分かりにくいですよね。
人が走り回ったり飛び跳ねたりした音が、
L-45 → 聞こえるがあまり気にならない程度
L-40 → 遠くからかすかに聞こえる程度
まで減衰されるという基準になります。
分譲マンションの工事では、床をフローリングに張り替える等の場合には、これらの防音規約に則って リフォームをする必要があるのです。まずは住んでいるマンションの管理規約を見直してみましょう。不明な場合には、管理人または管理会社に尋ねて下さい。
6-4.防音工事をしなくても自分専用の防音室を手に入れる方法
防音工事っていろいろ勉強しなくてはいけない事が多いし、内容が難しく本格的な防音性能を目指すと費用もかかりますよね?
ところが、防音賃貸マンションなら新築時から遮音性能の高い防音室が設置されていて、あなたは防音工事を行う必要がありません。つまり高額な防音工事費用が一切かからないのです。
「楽器相談」ではなく、しっかりと「楽器可」と謳っている防音マンションは現在、東京都内を中心に2000戸ほど存在しています。(2017年当社調べ)
そんな数ある防音マンションの中で、第三者機関による遮音性能測定の実測値を全ての物件で公表しているのは、東京に本社のあるツナガルグループが提供している防音賃貸マンション「サウンドプルーフ」シリーズだけです。
第三者機関による遮音性能を公表している防音賃貸マンション「サウンドプルーフ」
防音マンション「サウンドプルーフ」は、東京23区内で住まいとして特に人気のある東急東横線やJR山手線沿線を中心としたエリアに、今物件数を増やしています。「サウンドプルーフ」では、グランドピアノ・ギター・サックスなどの管楽器の24時間演奏が可能です。
日本初の三重防音構造として特許も取得しているサウンドプルーフプロ®では、ドラムセットや管楽器を含む全楽器のバンド演奏が可能な、世界トップレベルの遮音性能100dB(500Hz)を誇る防音室を完備しています。
防音マンション「サウンドプルーフ」に引越しすれば、今すぐ24時間思いっきり楽しい音楽生活をスタート出来ます!
7.まとめ
最後に、これを知らないと必ず失敗します!
マンションの防音工事に必要な予算をかけずに、安易に見積もり金額の安い会社を選んで工事を発注した場合には、期待していたほどの防音性能が発揮されなかったという失敗談をとても多く耳にします。
一般の工務店や建設会社、ハウスメーカーでは防音工事の知識や施工実績は無いものと認識して下さい。
マンションの防音工事を注文する場合には、信頼のおける音響専門の会社や経験豊富な防音専門の工事会社に依頼しましょう。